Archive for August, 2013

「萌え」も犯罪!?

韓国では昨年、「リツイートが有罪になる事件」が起きた。ツイッターで北朝鮮が運営するアカウントのつぶやきをリツイートしたのが国家保安法違反にあたると検察に起訴され、昨年の11月韓国の地方裁判所で有罪判決を受けたのである。この事件について昨日(2013年8月22日)高等裁判所で全面無罪の判決がくだった。この有罪判決は異常であると訴えてきた身としては嬉しい結果である。

とはいえ、検察が今回の高裁判決に不服し、最高裁まで持ち込まれるかもしれない。この問題について以前『genron.etc #7』(第9回目の連載。2013年3月発行)で取り上げたことがある。今回の高裁判決を機に、当時の寄稿文をここに公開する。

「萌え」も犯罪!?

 安天

1.リツイートも犯罪になる

昨年(2012年)の11月21日、韓国ではツイッターをめぐって二つの法的判断がくだされた。まず、ツイッターは単なる私的なつぶやきではなく、公的な「表現物」であるという判断がなされた。そして、リツイートも犯罪になり得ることが確定した。ツイッターが公的な表現であるという判断は、状況によってはあり得ると思うので頷けるけれども、リツイートが犯罪に当たるという法的判断にはさすがに言葉を失った。世界で最も手っ取り早い犯罪が登場したことだけは確かだ。クリック一回で犯罪者になれる。

リツイートなどで有罪判決を受けたのは24歳のパク・ジョングン(@seouldecadence)。北朝鮮の当局が運営していると思われる「我が民族同士」(@uriminzok)のツイートをリツイートしたことが、韓国の国家保安法違反に当たるという判断がなされた。この「我が民族同士」という北朝鮮のアカウントがツイッター・デビューしたとき、韓国語を使用するツイッター利用者の間で結構話題になっていたことを今でもよく覚えている。

東日本大震災以前の2010年後半のころだった。あの北朝鮮もツイッターのアカウントを作り、つぶやきはじめたというので、興味本位で色々な人たちが「我が民族同士」のツイートに関心をもった。僕も例外ではない。北朝鮮もハングル文字を使うので、韓国語話者なら「我が民族同士」のツイートが読める。もっぱら体制の広報・宣伝のためのものだろう、というのは容易に想像できたが、それでも、どうしても直接自分の目で確認したくなるものだ。

想像してみてほしい。第2次世界大戦後、日本が二国に分断された。そのもう一つの国と戦争も経験し、未だに休戦状態だ。知り合いの家族や親戚の中には、向こうの国に住んでいる人もいる。その国は非常に閉鎖的で、中々国内の情報を公開しない。最近は、こちら側を砲撃したことさえある。そのような国が突如ツイッターのアカウントを作って、日本語でつぶやきはじめたとしよう。ツイッターをやっている人なら、そのアカウントに興味をもつのは自然といえよう。

2.国家保安法の存在

それと同時に、「我が民族同士」のツイートに関わることの厄介さも、ツイッター利用者の間には広く認知されていた。韓国では法的に思想の自由が制限されている。北朝鮮で作られた、あるいは北朝鮮を肯定する書物などを所持したり、北朝鮮に肯定的な態度を表明すれば、国家保安法違反になるのだ。 Read the rest of this entry »

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